カラカラと音を立てて開く教室のドア。

やっと迎えにきた待ち人に、分厚い皮の背表紙の本を閉じて威圧的に睨み上げる。

勿論、そんな仕草に怖じ気づいてくれるような可愛気のある奴ではないのだが・・・・。






「はぁーい、部活終わったばっかでお疲れの進君に質問です。今一体何時でしょう?」






表情一変、思いっきりの作り笑顔で言ってやる。

進が(解りにくいが)気まずい表情をしていた。




「えぇ、現在7時40分。6時半に迎えに来るんじゃなかったの?」

「すまない・・・・・・・・。」




携帯の時計を目を細めて見つめる。

怒りのオーラは十分に感じ取っているらしい。

珍しく萎縮している。

小さく溜息を吐いて、目線を上げた。

何時も通り寄せられた眉間の皺。

彼は彼なりに悪いと思っているらしい。

再度溜息を吐いて立ち上がった。



「練習頑張るのも良いけどね、やりすぎは良くないんじゃない?体は大事にしないと、出来る物も出来なくなるよ?」




机の端に掛けられた鞄に本を仕舞いながら諭す。

進のことだ、どうせまた無茶な練習メニューでもこなしてきたのだろう。




「・・・・・・・・・・。」




無言。

どうやら、練習を減らしてくれるつもりはなさそうだ。

進は嘘はあまり吐かない。

その代わり、本当のことを言いたくない時には返答は一切返ってこないのだ。

全く、正直な奴。




「一応ね、私は私で心配してるわけですよ。せめてそこん所ちょってでも頭に置いといてよね。」




彼の求めているものが何かも知っている。

だからこそ人には出来ない努力をすることも。

けれども少しくらいは知って欲しかった。

その頑張り方を不安に思っている人間が、此処に存在すると。




「・・・・・・・・。」

「ん?」




名前を呼ばれて振り向く。

其処には、本当に解りにくいが、小さく笑っている進の姿があった。




「すまない・・・・。」



自然と表情が緩む。

そういうことを言うから、本気で怒れないのだ。



「何ニヤニヤ笑ってんのさ。ホラ、早く帰るよ。」



重たい鞄を肩に掛けて教室を出る。

が、後ろから付いて来た気配と共に、その肩の重圧が軽くなった。



「・・・持つ。」




少し前を歩く背を眺めながら、我ながらあまりの惚れ込み具合に自嘲気味に笑った。












(後書き)

今回のテーマ(?)は、「過保護な進を上回る過保護なヒロインさん」です。

進は過保護そうだと思うのは、私だけですか?