日差しを遮るカーテンがフワリと揺れた。
今日の授業は全科目消化。
帰宅部は大人しく帰宅し、残っている生徒達も各部活動に出払っている。
ようするに、教室には誰もいないのだ。
−鑑恭介、その人を除いては。
正直な話、私はこの鑑恭介という人物が苦手だったりする。
凡人の私を嘲笑うような完璧主義者(しかも主義だけではなく、ホントに完璧)。
風紀委員という役職のせいか馬鹿がつくほど真面目で、規律には教師以上に厳しい。
それに比べて私は、成績も中の下、目立ったところも特になく、遅刻こそしないものの(というか罰則が恐ろしくて出来ない)授業もさぼりがち。
自慢できる事と言えば、どの先生とも仲が良いことくらいだ。
見た目も中身も私とはレベルが数段違うのだ、劣等感や嫉妬の念を覚えるのはあまり褒められた事ではないにしても当然だと思う。
というか、同じ次元で考えること自体が、そもそもの間違いか。
とにかく、その全く抜け目のない人物が、
眠っているのだ。しかも、机に突っ伏して。
おそらく、風紀委員の仕事なのだろう、大量の資料の山に埋もれて眼鏡も外さずに、だ。
これは早くまとめなきゃいけないんじゃないだろうか、とか、
眼鏡掛けたままだと顔に痕が残るだろうなとか、思いつく事と言えば彼を今此処で起こさないといけないという理由ばかりなのに・・・・
何故だろうか、体が言う事を聞いてくれない。
極力物音を立てないように、向かえの席に腰を下ろす。
白刃の元に晒された寝顔は、何とも綺麗で。
「寝てる姿も抜け目無し、か・・・・・。」
ため息とともに零れた言葉は、少しだけ開いた窓から吹き込む風に巻かれて消える。
何ともなしに伸ばした掌が細くて柔らかい髪を撫でて、そのまま頬に到達した瞬間、
分かってしまった。
今まで彼に向けてきた感情は、劣等感でも嫉妬でもなくて。
ましてや、今、彼に触れた瞬間に感じたこの胸の苦しさは断じて彼が苦手だからではなく。
気づくまでは曖昧で、空気に溶けてしまいそうだったのに
それが分かってしまうと、この感情を型にはめるのはあまりに簡単で
つまり、私は
この人の事が好きなのだ。
眠ったまま目覚めない彼の額に一つ口づけを落として、私は静かに教室を後にした。
今、彼が目覚めてしまったら、きっと私は平常心ではいられないから。
まだこの気持ちは私の胸にだけ閉まっておこう。
せめて、彼の目が少しでも私の方を向いてくれるまでは。
(後書き)
恭介夢第2弾!
今回は「白い部屋」以前の話として書いてみました。
ようするに、二人はお互いに気づけてないだけで両思いってことで。
彼には、お兄ちゃんとか関係なく幸せになって欲しいなあと思います。