彼女は保健室で眠っていた。
5限目にふらりといなくなった彼女は、ついに今日の全授業を消化しきっても帰ってくる事はなかった。
理由は大方、昼食を食べて眠くなったとか、そんなところだろう。
彼女は日頃からそう言うタイプの人間だったし、今朝見かけた彼女はきわめて元気そうだったから。
「まったく、困ったものだな、君には・・・・」
ポツリと誰もいない保健室に呟く。
そのままゆったりとした足取りでベットのふくらみに近づいていった。
「・・・・・起きろ、さん。もう授業も終わった」
数回、眠る彼女の肩を揺さぶる。
彼女は眉間に皺を寄せて小さく呻いて見せた。
おそらくは軽く身じろいだとかその程度。
しかし、僕の目にはそれが苦悶の表情に見えて仕方がなかった。
なにせ初めて触れた彼女の体は想像以上に華奢で、
それこそ、僕が僅かでも加減を間違えてしまったら、たちまち跡形もなく崩れ去ってしまうような、そんな錯覚。
そんなことはあり得ないと分かっていても、一度想像してしまったら止まらない。
彼女の身になるべく負荷を掛けないように、そっと肩から手を離した。
未だ眠ったままの彼女の顔を覗き込む。
こんなに近くでまじまじと彼女の顔を観察するのは初めてだった。
いつもはしっかりと前を向いている強い瞳は、今は固く閉じられていてその長い睫毛をよりいっそう際だたせている。
傾いてきたとはいえ、まだ光を失わない日差しが窓に引いたカーテンの隙間から零れて、彼女の肌を照らした。
何も考えずに手を伸ばす。
するりと彼女の白い頬を指先でなぞると、柔らかで滑らかで暖かい彼女の感触。
指先をずらして少し湿った唇へ。
そのまま顔を近づけて・・・・・、
唇に柔らかい何かの感触を感じてはっと我に返る。
(今、僕は何をした・・・・・?)
酷く混乱している。
慌てて顔を離して、数歩彼女から距離を取ると少しだけ思考が回復してきて、今更ながらに事の重大さに気づいた。
無意識に触れる自分の唇には確かに彼女の感触が・・・・・・!
「・・・・・・・・っ!」
気づけば保健室から飛び出していた。
ついにやってしまった!
今まで彼女を意識した事はなかった。いや、ないと思っていた。
それでも、今“ついに”と思ってしまったということは、少なからず僕は彼女に好意を抱いていたという事で・・・・・。
気づいてしまったこの気持ちの名前は・・・・・
−恋心
「ったく、恥ずかしいヤツ・・・・」
残された彼女が小さく呟いたのを、彼は知らない。
(後書き)
やぁー・・・・書いちまったよ、おっかさん(何)
ジャス学・・・・、需要あんのかな?